紙芝居と5円玉
先日久しぶりに自分の生まれ育った町を車で通った。
今になってみると、「あれ?こんなに狭かったのか」と感じる道路も、
当時はまだ舗装されておらず、道の両端には小川が流れていた。
友達と笹舟を作り流して競争した。笹舟を追いかけ川沿いを走った。
かつては製糸業が盛んで、辺りには一面桑畑が広がっていた。
その桑畑の中を走り回りながら、赤く熟した桑の実を摘んで食べた。
まだ少し青みの残っている実が酸っぱくて美味しかった。
隣町のグループ゚と喧嘩になり、ランニングシャツでその桑畑を駆けずり回った。
まだ小さかった私は訳も分からず、後にくっついて、ただただ走るばかり。
4つ年上のわが町のリーダーが捕まった。
木工所の資材置き場で天井から縛られて吊されていた場面を今でも鮮明に覚えている。
それでも彼は怪我もなく生還し、再び年少者である私たちを何かにつけかばってくれた。
誰もが言わずと認める頼もしき「ガキ大将」であった。
一歩入った小道ではビー玉やメンコ(パッチンと言っていた)で近所の友達と競い合った。
今日は負けても、次の日は勝った。
表の道路ではハンチングをかぶり日焼けした眼鏡のオジサンが紙芝居を見せてくれた。
5円玉を握りしめ、「黄金バット」や「月光仮面」に見入った。
割り箸に水飴をつけ、両側をせんべいで挟んでくれる。水飴は真っ白になるまでぐるぐるとこねた。
水飴が先だったか紙芝居が先だったかは良く覚えていない。
紙芝居より水飴の方に興味があったことだけは確かだ。
昭和30年代のことである。
生まれ育ったその場所は、もうすっかり景色が変わっている。
たまには日差しを浴びながら、ぶらっとこの辺りを歩いてみるのも楽しいかも知れない。
by K.Terasawa
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